ゲームの虚無 vs メタ学習:UMPCとAniの冒険

ポッドキャスト「We Are On The Way」46回目をブログにまとめました。 AIの最新トレンドからゲームの哲学的な議論、さらには日常生活の技術談義まで、 竹内(@rikson_en)との車内トークがいつも通り深く広がった回になりました。 わかりやすくお届けします。

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UMPCが再び輝く!ゲームとの意外な出会い

口火を切ったのは、竹内が購入していたUMPC、GPD-WIN4の話です。 見た目はPSPのようなポータブルなゲーミングPCで、最初は「これでプログラミングをしたらかっこいい」と思って二十数万円を投じたものの、開発環境のセットアップが面倒になって放置していたそうです。 ゲームもしない竹内にとっては、しばらくはポッドキャスト収録専用機として眠らせていたデバイスでした。

ところが最近になって、Xbox Cloud GamingでUFCのゲームを遊び始めたことで、一気に“使い道”が生まれたとのことです。 最初はブラウザ経由で試したものの、Xbox純正コントローラー以外は弾かれてしまい諦めかけたところ、 Xboxアプリ経由なら備え付けコントローラーで動作することがわかり、そこから一気に火がついたと笑っていました。 「これは無駄じゃなかった」と肩をなで下ろす竹内に、僕は「面白いですか?勉強になりますか?」と聞きました。 竹内は「面白いし、格闘技としての勉強にもなる」と答えつつ、RPGは苦手で人生で一度もクリアしたことがなく、 途中で飽きてしまうタイプだと告白します。 スマブラのようなアクション格闘は好きだったけれど、中学2年でやめてしまった。 強くなっても何も残らない虚無感が押し寄せて、一気に冷めたのだそうです。

ゲームは“無駄”なのか、それとも“メタ学習”への入口なのか

ここから議論は一気に抽象度を上げていきます。僕は、ゲームであれ英語であれプログラミングであれ、「脳内の神経系を鍛える」という点では本質的に同じではないかと主張しました。特定領域のスキルよりも、その学習プロセス自体を抽象化して他領域に転移させる“メタ学習”が、これからの時代には重要になるはずだと考えています。数学を伸ばしたいなら数学の問題を解くのが最短距離であることは間違いありません。しかし、今後必要とされる“特定領域”自体が揺らぐ世界線では、楽しめる領域で学習を回し、その上位概念としての“学習そのもの”の習熟度を高めることに価値があるはずだ、と。

ただ、竹内は「それは遠回りでは?」とブレーキを踏みます。スマブラが格闘技に直結しないように、ゲームで鍛えた神経回路は現実世界に転用しづらいと感じているのです。僕は「単純な一対一対応を想定しているからそう見えるのであって、もっと抽象的な結びつきはあるはず」と返しましたが、竹内はそもそもゲームを楽しめなくなった自分にとって、その議論は机上の空論に見えるとも言います。確かに「メタ学習のためにゲームをやる」という発想は、ゲームに熱量を持てない人間には響きません。ゲームを“目的化”できるeスポーツの世界は確かにありますが、それは狭き門であり、刹那的でもある。だから竹内は距離を置いた――その動機はとても合理的だと思います。

依存をつくる設計と、社会的規制の介入

僕自身も昔、ファイナルファンタジーやMMORPGにどっぷり浸かった時期がありました。 オンラインで友達ができたこともあります。 しかし同時に、熱中しすぎて会社に来なくなる人たちが目の前で発生していました。 優秀な同僚がFFにハマってフェードアウトしていったケースを、僕は今もはっきり覚えています。 竹内も、優秀な学生がゲーム依存で不登校になり、治療後に再発したケースを本で読んだと話します。 ドーパミンを出させる設計は“面白さ”と“依存性”の線引きを曖昧にしてしまいます。

とはいえ、かつてよりは規制も入りました。ガチャの確率表示や、プレイ時間に応じて経験値を絞るといった、プレイヤーを壊さないための“手加減”がデザイン側に入り始めています。 合法的に依存を生成する設計は、社会的フィードバックを経て修正されつつあるのだと思います。

TSkaigi――Result型は「自前で十分」か、「ライブラリで関数型に振り切る」か

会話はTSkaigiへと飛びます。竹内は続きを視聴しており、元同僚がLTで「Result型を自作するか、Neverthrow や fp-ts を使うか」を論じていたそうです。例外を投げず、成功・失敗を型で表現してパイプライン的に合成していく――いわゆる Railway Oriented Programming を本気でやるならライブラリの価値は十分にあります。一方で、「とりあえず Result を返したい」程度であれば、自前実装でも十分にシンプルで、実務的にはむしろ良いトレードオフになる、という主張でした。

僕が「自分でサッと作れるものなんですか?」と聞くと、竹内は「全然いけます」と即答します。isOk(boolean)、エラーメッセージ(または Error オブジェクト)、成功時の値――この程度の構造でライトに導入するのなら、自前のほうが学習コストは低く済みます。一方で、関数型に寄せて map / flatMap / chain などで合成していく世界観をきちんと持ち込みたいなら、Neverthrow や fp-ts を使うほうが表現力や安全性の面で優位です。要は「どこまで抽象度を上げたいか」と「チームでその抽象度を維持できるか」のトレードオフなのだと感じました。

なお、LT(ライトニングトーク)は 3〜5 分程度の短い発表で、RubyKaigi では時間超過で強制終了されるほどの熱量が良い、と主催者が言っていたのが印象的だったそうです。調整するな、切られるくらいでちょうどいい――技術発表に対する姿勢として、僕はけっこう好きな価値観です。

Grok 4 と “Ani”――「燃える」コンパニオンAIが開けた、新しいUXの地平

最後に、僕のターンとして xAI の Grok 4 の話題を出しました。同時に公開された“コンパニオンモード”では、アニメ調の女性キャラ「Ani」と音声で会話できます。いわゆる“燃え要素”が強く、キャバ嬢的だと捉える人もいて、大きく話題になっています。性能面でも Grok 4 は“現状もっとも IQ が高い”と称されており、技術的・文化的の両面で火力の高い投下だったと思います。ただ、GPT-5 の登場が視野に入っている時期でもあり、最強の椅子はそう長くは空いていないでしょう。

さらに OpenAI も PC を操作するエージェント機能を発表しました。OS 依存かどうかはまだ読み切れていませんが、中国発の同系統サービス「Manas」との“誰が PC を操作する時代を握るのか”という競争が始まったようにも見えます。結局のところ、僕らは「触ってみないとわかりませんね」で合意しました。技術の未来を言語化することはできますが、体験の質は、手を動かして初めて語れるからです。

結び――“虚無”を超えた先にある抽象度を、どう自分のものにするか

竹内はゲームから降りました。僕はゲームを“メタ学習”の踏み台にできると主張しました。 どちらが正しいという話ではありません。自分が熱量を持てる対象で、学習の抽象度をどこまで上げられるか――それこそが、技術が加速度的に陳腐化していく時代を生き延びるためのコアスキルだと感じています。 TSkaigiのResult型の話にせよ、Grok4とAniの“燃える”UXにせよ、僕らは結局「どのレイヤで設計し、どこを切り捨て、どこを抽象化するのか」という一点をめぐって議論しているのだと思います。

ジムに着きました。次はどんな技術と日常が交錯するのでしょうか。 僕はまず、OpenAIのPC操作エージェントを“自分の手で”回してから、またここで話したいと思います。 技術の未来は、結局いつも手触りの中にしかないのだと、あらためて感じています。

まとめ

ジムへの道中でUMPCからゲームの哲学、依存症、TSの技術、AIの最新まで幅広い話題で盛り上がりました。 技術の進化と適応の大切さを改めて感じ、竹内との会話はいつも刺激的です。皆さんも今回のPodcastを聞いてみてくださいね!

今回の話に出てきたツール等